自律神経の各器官への作用

自律神経の交感神経と副交感神経は互いに相反する作用で制御していますがが、各器官へはそれぞれ以下のような働きをしてバランスをとっています。
自律神経失調症になって自立神経のバランスが崩れると、片方への作用が強くなり、症状として現れるのです。

交感神経

器官

副交感神経

散大

瞳孔

瞳孔

収縮

分泌量減少

唾液

唾液

分泌量増加

心拍数増加

心臓

心臓

心拍数減少

収縮
→血圧上昇

末梢血管

末梢血管

拡張
→血圧降下

拡張

気管・気管支

気管・気管支

収縮

運動促進

胃

運動抑制
胃液分泌増加

グリコーゲン分解
→ブドウ糖の放出

肝臓

肝臓

グリコーゲン合成

排尿筋の弛緩
→排尿抑制

膀胱

膀胱

排尿筋の収縮
→排尿促進

自律神経失調症の治療薬はどのようなものか?

自律神経失調症はその原因が特定しにくいことから、病院にいっても自律神経失調症を根本的に改善するお薬を処方されることはほとんどありません。
漢方薬は自律神経失調症を根本から改善することができる治療薬ですが、病院での治療はまだまだ西洋医学が中心であり、漢方薬を処方する病院は非常に少ないのが現状です。
では、どのようなお薬が処方されるのかというと、交感神経か副交感神経のいずれかに偏った作用をしている自律神経の働きを一時的に元に戻してあげる薬です。

自律神経と神経伝達物質

自律神経が各器官に働きかける方法は神経伝達物質によって行われます。
自律神経のうち交感神経が興奮すると、交感神経の末端からノルアドレナリンという神経伝達物質が放出されます。
各器官にはノルアドレナリンをキャッチする受容体があり、この受容体が交感神経から放出されたノルアドレナリンの情報をキャッチすると各器官に伝達され作用します。
同じく、自律神経のうち副交感神経が興奮すると、副交感神経の末端からアセチルコリンという神経伝達物質が放出され、各器官のアセチルコリン受容体がその情報をキャッチすると、各器官に伝達され作用します。

ノルアドレナリンの受容体はα受容体とβ受容体の2種類に大別され、さらにα受容体にはα1、α2の2種類に、β受容体はβ1、β2、β3の3種類に細分されます。
α1受容体は主に血管に存在し血管の収縮、瞳孔拡大、立毛、前立腺収縮に関与しています。
α2受容体は主に神経終末あって神経伝達物質の放出、血小板凝集、脂肪分解抑制に関与しています。
β1受容体は主に心臓に存在し心臓の収縮心拍数の増加、子宮平滑筋弛緩に関与しています。
β2受容体は主に気管支筋、血管などに存在し気管支の拡張、血管平滑筋の拡張などに関与しています。
β3受容体は脂肪組織、消化管、肝臓、骨格筋などに存在し脂肪の分解に関与しています。

一方、アセチルコリン受容体はムスカリン性アセチルコリン受容体とニコチン性アセチルコリン受容体に大別されますが、副交感神経の末梢でアセチルコリンを受け取る働きをしているのはムスカリン性アセチルコリン受容体です。
ムスカリン性アセチルコリン受容体はさらにM1〜M5の5種類が確認されており、器官ごとに分布する種類が異なります。
神経伝達物質

自律神経の作動薬と遮断薬

自律神経失調症の治療薬は、この受容体を薬によって意図的に作動させたり、遮断させたりすることで各器官の働きを正常な状態に戻しているのです。
自律神経の受容体に作用して、低下した器官の働きを活発にする治療薬を作動薬といい、活発になりすぎている器官の働きを抑制する治療薬を遮断薬といいます。

便秘、下痢を伴う自律神経失調症の症状

便秘や下痢は腸の働きに異常がある時に起こるのですが、大腸の働きは自律神経によって支配されています。
腸は蠕動運動(イモムシののような動き)で食べた物を移動させていくのですが、この動きは自律神経のうちの副交感神経が働くことによって行われ、交感神経によって抑制されてバランスをとっています。

蠕動運動が正常に行われていると正常な便意が起こり、大腸で適度に水分が吸収されるのでよい形の便が排泄されますが、副交感神経が働かないと腸が痙攣して蠕動運動が止まってしまうので便秘になってしまい、逆に副交感神経の働きが強すぎると細かく痙攣するような蠕動運動が起こり、大腸で十分水分が吸収されないまま急激に移動するため、下痢を起こしてしまいます。
ですから、精神的なストレスによって自律神経のバランスが崩れると、下痢や便秘を起こしやすくなり、場合によっては下痢と便秘が交互に起こることもあります。
また、ガスが溜まってお腹が張ったり、おならがよく出るといった症状も現れます。
ストレスが原因によるこれらの症状は過敏性腸症候群と呼ばれていて、ストレス社会となった現代では過敏性腸症候群を訴える方が非常に増加しています。

冷え、のぼせ、しびれを伴う自律神経失調症の症状

「足下が冷えて仕方がない」、「顔がカッカとのぼせる」、「足先がしびれてくる」、という症状をお持ちの方は特に女性の方に多く見受けられます。
自律神経失調症では、冷えやのぼせ、しびれという症状が現れますが、これらは全て血液の循環の異常によるものです。

通常気温や室温の変化すると、自律神経がその変化に対して自動的に反応し、体温を調整しているくれています。
体感温度が高くなると自律神経のうちの交感神経が働き、血管を縮小して血流を減らして体温を下げようとし、逆に体感温度が下がると自律神経のうちの副交感神経が働き、血管を拡張して血流を増やし、体温を上げようとします。
しかし、自律神経失調症の場合には、こうのうような自律神経による自動的な体温調整機能のバランスが乱れているため、交感神経の働きが高まり血管が収縮すると足腰が冷えたり、副交感神経の働きが高まり血管が急激に拡張すると顔がカッとほてったり、また、場合によっては「足は冷えるのに顔はほてる」という上半身と下半身の自律神経のバランスが互い違いに起こるケースもあらわれてきます。
また、しびれも冷えのケースと同様に血液の流れが悪くなり足の血行が悪くなったときに起こる症状です。

めまい、立ちくらみを伴う自律神経失調症の症状

自律神経失調症では、周りのものがぐるぐる回る、体がふわっと宙に浮いたような感覚がする、といった症状が現れることがあります。
このような症状は、自律神経のバランスが乱れることによって、体の平衡感覚を保つ機能と関係のある脳の一時的な血行不良や耳の奥にあるネバネバした液体の流れの変調が原因であると考えられます。

体の平衡感覚を保つ器官は、耳の内耳にある三半規管です。
平衡感覚を保つ三半規管

三半規官は3本の管がそれぞれ直角に出ていて、管の中に満たされたリンパ液が頭の傾きによって動きます。
このリンパ液の動きを三半規管の中にある毛のような突起物を持つ有毛細胞が感知して、頭がどの向きに傾いているかという情報を脳に伝えるのです。
ですから、この耳の内耳のリンパ液が正常に流れないと平衡感覚を正確に感知することができませんし、三半規管からの情報を受け取る脳の部分のの血流が悪くても平衡感覚の情報を正確にキャッチできないため、めまいや立ちくらみ、ふわふわとする浮遊感の症状が現れるのです。

めまいが繰り返し起こり、これに難聴や耳鳴り、吐き気が伴う症状が現れるとメニエール病と呼ばれています。

動悸、頻脈など不整脈を伴う自律神経失調症の症状

自律神経失調症では、特に運動など体を動かしていないのに、急に心臓がどきどきしたり、脈拍が乱れたりすることがあります。

心臓の鼓動は、右心房の壁に存在する洞房結節と呼ばれるところからの電気の刺激伝導によって制御されていますが、この心拍数の速度を自動的に調整しているのが自律神経なのです。
自律神経のうちの交感神経が優位に働いていると心拍数が増加し、副交感神経が優位に働くと心拍数は減少します。
そのほか心拍数は、交感神経系循環ホルモンであるアドレナリンとノルアドレナリンが副腎髄質から血液中に分泌されることによって増加したり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると増加したりとホルモンの分泌量によっても影響を受けます。

ですから、自律神経失調症で自律神経が不安定になると、心臓の鼓動を一定に保っている刺激伝導系乱が乱れるために、動悸や不整脈などの症状が現れるのです。
不整脈がある人は、同じ不整脈が何度も起こりやすい傾向があり、不整脈によって心臓から全身に送られる血液の量に悪影響がでると、ふらつきやめまいなどの症状が伴うことがあります。

軽度の不整脈はそれほど問題にはなりませんが、胸の痛みや息切れを伴う症状は冠状動脈の動脈硬化など心疾患の可能性もありますので、お医者さんに見てもらうようにしましょう。
心臓は生命に関わる器官であることから、ちょっとした動悸や胸部の不快感も気になって不安になり、そんな不安や恐れが動悸や息切れなどの症状はさらに強くする心臓神経症と呼ばれる神経症になる悪循環をもたらしますので、早期に原因をはっきりさせて精神的な不安を取り除くことも大切です。


頭痛、肩こりなど痛みを伴う自律神経失調症の症状

自律神経失調症の症状としてよくおこるのが頭痛や肩こりなど痛みを伴う症状です。
これらは主に自律神経のうちの交感神経が過剰に働くことによっておこる症状です。
交感神経の働きが強くなると末梢にある毛細血管が収縮し、血流が悪くなるため血行不良をおこします。
血行不良になると筋肉が緊張するので、頭痛や首筋のこり、肩こりなどの症状が現れるのです。
さらに、筋肉を覆っている筋膜にある神経や筋肉の血管壁にある神経が刺激されることによって筋の痛みが現れることもあるのです。

女性の場合は、ホルモンバランスの乱れによる自律神経失調症によって、月経前や月経時、排卵時に骨盤内の臓器が充血するために腰の痛みを伴うことがあります。

また、自律神経失調症によって顔面に激しい痛みを感じる方もいらっしゃいます。
顔には、脳かられるこめかみのところ神経節を作り、そこから3本に枝分かれしている三叉神経と呼ばれる神経があります。
三叉神経痛は一瞬の走るような激痛がおこり、痛みのため歯磨きができなかったり、顔も洗えないばかりか、食事をとることもままならないという状態になることもあります。

ただし、これらの痛みの症状は、神経の圧迫によるものなど自律神経失調症以外の病気が原因であることもありますので、自律神経失調症打と決めつけずにお医者さんによく診断してもらう必要があります。

ホルモンバランスの乱れによる自立神経失調症

自律神経失調症の原因で最も多いのが、ホルモンバランスの乱れによるものです。

  • なぜホルモンバランスの乱れが自律神経を乱すのか?
  • ホルモンバランスをコントロールしているのは脳の中心部分にある間脳の視床下部というところです。
    視床下部の下には小豆ほどの大きさの下垂体がつり下がっていて、下垂体から性腺刺激ホルモンや甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、成長ホルモンなどさまざまなホルモンが分泌され体の機能がコントロールされているのですが、この下垂体からのホルモン分泌を調整しているのが視床下部のホルモン中枢なのです。


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    視床下部にはホルモン中枢以外にも様々な中枢があり、その中にはそれぞれの臓器で働く末梢自律神経を統制する自律神経中枢もあるのです。
    ですから、ホルモン中枢の機能がおかしくなると、視床下部にあるその他の中枢にも連鎖反応のような影響が現れるので、ホルモンバランスの乱れによって自律神経失調症がおこるのです。


  • 女性に多いホルモンバランスの乱れによる自律神経失調症
  • 男性の場合は思春期に性ホルモンが一斉に分泌されますが、思春期を過ぎるとその後は更年期辺りまではホルモンバランスは安定していますので、ホルモンバランスの乱れによる自律神経失調症になることはあまりありません。
    一方、女性の場合は、思春期で初潮を迎えた後も毎月月経があり、さらに妊娠や出産を経験し、閉経を迎えるまで一生の大半でホルモン中枢が絶えず変化しています。
    このため、女性は男性に比べてホルモンバランスが乱れることが多くなり、自律神経失調症のおこる頻度も高くなる訳です。

    生活環境の変化によっておこる自律神経失調症

    自律神経失調症は、日常生活の変化によって起こりやすくなります。
    これまで経験したことのない社会環境や人間関係にさらされることで、精神的なストレスがたまり、自律神経のコントロールができなくなってしまうのです。

    わかりやすい例が就職の時です。
    就職するまではある程度自由のきく立場であり、社会的な責任感もあまりなく、人間関係でも自分と気の合う人とだけ交流を持てる選択の余地があります。
    ですが就職をするとそうはいきません。
    就職すれば社会人としての責任感が要求され、なれない仕事に焦って気が張りつめ、いやがおうにも職場の上司やお得意先などと交流を持って人間関係に気を使わなければなりません。
    また、頑張ろうという気負いが強すぎて、無理に環境に適応しようとする気持ちが精神的な疲労の蓄積につながり、自律神経を乱してしまいます。
    4月は進学、就職、配置転換などで環境が大きく変わる季節で、約1ヶ月たった5月の連休頃にうつ的な状態が現れることが多いため「5月病」という言葉をよく耳にしますが、まさに精神的なストレスによる自律神経失調症の症状と言えます。

    一方、新しい生活環境による精神的なストレスとは逆に、気持ちの緩みによって自律神経失調症になることもあります。
    例えば、定年になりつい最近まで行っていた責任のある仕事から退いたとき、生まれてからずっと育ててきた子供が結婚などによって家を出て行き、世話をする必要がなくなったとき、ローン返済などやりくりしていた家計が、経済的に余裕ができてほっとしたとき、というように今まで1つの目的に合わせて調子よく一定に保たれていた生活リズムに空白ができると、精神的な緊張がなくなり自律神経も不安定になってしまうのです。

    このように自律神経失調症は、自律神経が緊張しすぎても、緩みすぎても起こりうるのです。

    自律神経失調症になりやすい性格

    自律神経失調症の原因として最も影響を受ける要因は性格です。
    人それぞれ様々な性格を持っていますが、細かいことにはあまりこだわらないタイプの人と、些細なことでも気にするタイプの人がいます。
    自律神経失調症は後者のように神経質な性格の人で非常に起こりやすくなります。

    神経質な性格の人というと、なんでもきちんとしていなければ気が済まず、周りの目が気になり、1つのことをいつまでも気にしていろいろな心配事をため込んでいって精神的ストレスを増やしていってしまいます。
    そうすると、精神的な悩みや悲しみ、驚きなどに接するたびに、感情の影響を受けやすい脳の大脳辺縁系の機能が乱れ、これが視床下部にある自律神経中枢を刺激するので、交感神経と副交感神経のバランスも乱れて自律神経失調症になりやすくなるのです。
    まさに「病は気から」という言葉が当てはまりますね。

    性格は治そうと思って簡単に直せるものではありませんので、いかにして気分転換しストレスを解消するかが自律神経失調症を解消するための大切なポイントになります。
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